IFAとは、「independent financial advisor」の略で、特定の証券会社などに属さない独立したフィナンシャルアドバイザーのことです。
特定の会社に属していないので、組織の利益ではなく、顧客の利益を重視したアドバイスが可能です。
この記事では、IFA発祥の地であるイギリスにおけるIFAの現状と働き方について解説します。
イギリスにおけるIFAの地位
イギリスはヨーロッパ最大の資産運用大国ですが、IFAは個人への投資アドバイスを含む金融サービスの担い手として、伝統的に大きな地位を占めてきました。
しかし、イギリスのアドバイザーにとって大きな転換点がありました。それは2013年1月に施行された RDRです。
RDRによって変わったイギリスのFA
RDRとは、”Retail Distribution Review”の略で、日本語では「金融商品販売制度改革」といいます。イギリスのフィナンシャルアドバイザーに関する規制強化のことです。
当時のイギリスFSA(現在のFCA~金融行為規制機構) が、「個人投資家への投資サービスの課題は、不適正販売・高回転倍率・非継続ビジネスモデルにある」と指摘したことが発端でした。
RDR の施行により、フィナンシャルアドバイザーは運用会社から直接手数料受け取ることが禁止され、資格要件も厳格化されました。
RDR実施により、投資アドバイス事業は次の2つに明確に区分されたのです。
- Independent Advice
顧客のニーズに応じて、フィナンシャルアドバイザーがすべての金融商品の中から適切なアドバイスを行います。ただし、金融商品の選択や範囲に、制限があったりバイアス(偏り)があったりしてはいけません。
- Restricted Advice
限定的な金融商品を選択し、顧客ニーズに応じた投資アドバイスを行います。
どちらの形態でもIFAの収入源は、個人投資家からのフィー(相談料など)に限定される形となったのです。下の表は、RDR施行後のFA会社の収益構成の推移です。
- Commission:コミッション 投資信託などの販売手数料
- Fees/charges:フィー 投資アドバイスなどの相談料
RDRの実施により、2014年以降の新規契約からのコミッション収入の受け取りができなくなり、アドバイスなどのフィー収入が増加しているのが分かります。
イギリスにおいて高まるFA向け支援サービス
イギリスのFA(フィナンシャルアドバイザー)業界では、フィナンシャルアドバイザー規制関連やプロダクト関連の支援を提供する「FA向け支援サービス」の重要性が高まっています。それには、2つの理由があります。
1つ目は、フィナンシャルアドバイザーに対する規制強化です。
RDRの施行で資格要件が厳格化されたことに加え、2018年からは自己資本比率に係る規制が厳格化されるなど、さらに財務の健全性向上も求められるようになりました。
このような規制強化に自前で対応できないフィナンシャルアドバイザーにとって、支援サービスがいっそう求められるようになったのです。
二つ目は、個人向け投資サービス業界における競争の激化です。
大手金融機関もWM(ウェルスマネジメント)事業を強化するなど、フィナンシャルアドバイザーにとって顧客獲得競争が一段と増しています。
大手金融機関に対抗できるような商品やサービスを拡充させるためにも、フィナンシャルアドバイザー向け支援サービスの重要性が増しているのです。
Independent Adviceのアドバイザーが投資アドバイスを顧客に提供するためには、金融商品にバイアス(偏り)があってはいけません。
しかし 、個別の運用会社から金融商品の提供を受ける形では限界があります。
IFA向けプラットフォーム
そこで、プラットフォーム会社によるIFA 向けサービスを利用して、幅広い金融商品の提供を受ける形が増えているのです。
イギリスにおけるプラットフォーム会社は、多くの投資信託を提供するファンドのスーパーマーケットで、IFA向けの取引プラットフォームを提供しています。
たとえば、顧客取引の集約管理や、総合的な情報提供などです。
投資信託関連の支援を中心に、付加価値サービスとして規制関連の支援サービスも提供しています。
まとめ
イギリスの個人向け投資サービス業界では投資信託の販売額の約9割をIFAが占めています。
投資信託だけではなく、保険や住宅ローンなど様々な金融サービスを包括的に提供するというビジネスモデルが定着しています。
2013年に施行されたRDRで投資信託の手数料を受け取ることができなくなり、イギリスのフィナンシャルアドバイザーはコミッションビジネスからフィービジネスに大きく変化しました。
以前は投資信託の銘柄を選ぶ人がIFAでしたが、近年は顧客とのリレーション(関係)構築に力を注いでいるアドバイザーが増えているのです。
日本においても自助努力による資産形成が必要になる中、専門家による投資アドバイスの重要性は増しています。
ただ、日本のIFAはコミッション収入がメインで、イギリスのように顧客本位のアドバイスができるアドバイザーになれるかどうかというのが課題だといえます。