IFAとは、”Independent Financial Advisor” の略であり、その言葉の通り独立したファイナンシャルアドバイザーの事を指しています。
IFAは証券会社や保険会社などに雇用されている訳ではなく、完全な個人事業主として契約をしていますので、基本的には『収入の大部分=歩合給』という報酬体系になっている事が多いです。
しかし、この報酬体系はIFAと所属する金融商品仲介業者との契約によって決まるものであり、それぞれの業者が自由に決めて提案して良いことになっています。
今回は、IFAの代表的な報酬体系について解説していきます。
IFAとお金の流れ
報酬体系を紹介する前に、その前提となるお金の流れについて把握しておく必要があります。
以下の図は、IFAとその関係者との間に発生するお金の流れです。
ここに記載しているのは、IFAが仮に100万円の手数料をあげた場合のお金の流れです。
まず最初に証券会社から仲介業者に対して、70万円が送金され、その後、仲介業者からIFA個人に対して50万円の報酬が送金される流れです。
このケースでは、「IFAの報酬率=50%」である事を意味しています。
報酬率は金融商品仲介業者ごとで異なる
ここで最も重要で、IFAが注意しておかなければならないのは、「証券会社から仲介業者に支払われる報酬率は変動する」という事です。
上のケースでは、手数料100万円に対して70万円を仲介業者に支払っていますので、70%の契約となっています。
このパーセンテージは、仲介業者の規模や実績などに応じて変動する事になっており、「○万円以上なら○%」のような契約を結んでいる業者もあります。
完全歩合給の契約
シンプルでわかりやすく、業界内では最もメジャーな報酬体系です。
契約の内容としては、「証券会社に入金された手数料の○%を支払う」といったようなシンプルな契約内容になっている事が多いです。
報酬率の相場
IFAが受け取る報酬率は所属する金融商品仲介業者や契約形態によって異なります。
基本は50%以下が多い
多くの金融商品仲介業者では、50%以下という報酬率を提示しているケースが目立ちます。
日本におけるIFAビジネスは、徐々に広がりつつあるものの、IFAの登録人数はまだ3,500人程度(2018年12月時点)しかいません。
一方で、金融商品仲介業者は1,000社近く登録されており、1社あたりのIFAの人数はあまり多くありませんので、小規模な金融商品仲介業者に所属しているIFAが多い状況です。
つまり、証券会社から仲介業者に支払われる報酬率のレートが低く設定されているケースが多く、60〜65%程度に設定されている仲介業者が多いと推測されます。
また所属するIFAの人数が少ない場合、IFA1人あたりが負担すべき事務経費が高くなりますので、IFAの報酬率は必然的に高くても45〜50%に設定される事が多いです。
大手金融商品仲介業者では50%以上も
上で説明している通り、仲介業者に実力があるケースでは、証券会社から仲介業者への報酬率が70%以上に設定されている場合があります。
また、所属するIFAが多ければ多いほど、IFA1人あたりの事務経費負担が少なくなるため、IFAに対して高い報酬率を提示することができます。
ただし所属するIFAが多い仲介業者では、IFA間の実力にバラツキがあるので、必ずしも全員が同じ条件で働いている訳ではありません。
仲介業者の規模が大きくなると、事務所の席にも限りがあるため、実力がないIFAはなるべく排除していきたいという心理が働きます。
そのため大手の仲介業者においては、実力がないIFAは交渉力を持たないので、報酬率などでは優遇されにくいです。
完全歩合のメリット
完全歩合での契約をする主なメリットはこの3つです。
- シンプルでわかりやすい
- 報酬率が高い事が多い
- 規則に縛られない
それぞれ説明していきます。
シンプルでわかりやすい
手数料の○%となっている場合、計算がしやすく、仲介業者間での比較も容易になります。
仲介業者が給与計算をしやすいだけでなく、IFAは手数料をコントロールする事によって、消費税納税事業者になるのを意図的に回避することなども可能になるため、お互いにメリットがある契約方法であると言えます。
報酬率が高い事が多い
IFAとしては、仕事を自分で取ってくる以上、どうしてもそこの仲介業者に所属しないといけない理由はありません。
仲介業者のネームバリューがない以上、基本的にはIFAの個人プレーによって営業が成り立ちますので、IFAからすれば1%でも高い条件の仲介業者に所属したいと考えます。
そのため仲介業者においては、完全歩合というドライな関係である以上、IFAに対してどれだけの報酬率が提示できるかのみが重要な要素になります。
規則に縛られない
働く上での基本ですが、固定給を少額でも貰うことで、その会社に貢献しなければならない義務が発生します。
完全歩合の契約関係である事で、出社する義務は当然ありませんし、会社にかかってきた電話を対応する必要もありません。
調子が悪く、手数料がなかなか上がらなかったとしても、仲介業者にとやかく言われることもありません。
主従関係が生じないため、時間の使い方なども自由になり、精神的に楽な状態で働く事ができるでしょう。
完全歩合のデメリット
完全歩合での契約をする主なデメリットはこの3つです。
- 収入が不安定
- 労働時間が長い
それぞれ説明していきます。
収入が不安定
言うまでもなく固定給がゼロであるため、手数料が相場環境などに左右されるIFAは収入が安定しません。
特に独立した当初は、口座開設などに時間がかかりますので、2〜3ヶ月間は手数料がほぼゼロであるIFAがほとんどであり、貯金を切り崩して乗り切る必要があります。
マーケットが悪化すれば、それと同時に手数料も下がる事になり、完全歩合であればIFAの収入に直結しますので、家族に反対されるIFAも中にはいるかも知れません。
労働時間が長い
完全歩合制で働くIFAは、勤務時間に制約がないため、何時に出社しようが自由であり、休日なども自由に自分自身で決める事ができます。
一方で、顧客からの問い合わせなどが夜間や土日に来る場合もあり、その際に自分で対応する必要があります。
また、取引先との良好な関係を築くために飲み会に行く必要があるケースもあり、顧客が増えてくると意外とプライベートの時間が確保できないという事になりやすいです。
仕事のオンとオフの境目がなくなってしまうので、デメリットに感じる人も多いでしょう。
固定給(社員IFA)
あまり無いケースですが、一部の金融商品仲介業者では固定給(正社員としての雇用契約)を提示している場合もあります。
固定給の相場
歩合給と異なって、業者ごとにあまり大差は無いように思います。
月給30万円前後が相場
原則としては採用の対象となるのが、証券会社や生命保険会社での営業経験者になりますので、ある程度の金額を提示しているケースが多いようです。
基本的には、金融業界は全体的に給与が高く設定されているので、事務員としての採用でもない限りは、世間の平均年収よりも高い水準で募集をしています。
固定給のメリット
固定給のIFAとなる主なメリットはこの2つです。
- 収入が安定する
- 休日がある
それぞれ説明していきます。
収入が安定する
言うまでもなく、最大のメリットは正社員での採用になりますので、毎月の給与が保証される点です。
完全歩合での契約が主流であるIFAの業界では、多くのIFAが独立当初、数ヶ月間は収入がゼロという状況が続きます。
また、相場が急変したり自分が病気になってしまったりした場合、個人事業主ですので一切保証がなく、収入が途絶える事もあります。
何より、漠然とした将来の不安と常に付き合う必要が無くなりますので、正社員として採用されれば、メンタル面と収入面で安定した生活を送る事ができるでしょう。
休日がある
「休日は歩合でもあるだろ?」と考える人もいるかと思いますが、歩合給で働くIFAの多くは、あまりプライベートな時間がありません。
顧客からの問い合わせへの対応や付き合いなどで、土日にしなければならない場合もよくあります。
固定給である正社員になれば、あくまで顧客は会社の顧客ですので、必ずしも顧客に対して自分の連絡先を教える必要はなく、顧客対応は業務時間内だけすれば良くなります。
海外旅行中であっても自分で対応しなければならないようなIFAからすれば、羨ましく感じるメリットであると思います。
固定給のデメリット
固定給のIFAとなる主なデメリットはこの3つです。
- 成果が収入に反映されない
- ノルマがある
- 会社の指示に従う義務
それぞれ説明していきます。
成果が収入に反映されない
固定給は、毎月ほ給与が保証されている反面、基本的には変動がなく、頑張ったからといってすぐに増えたりするものではありません。
また個人事業主と比べると、保険や年金などが手厚い分、経費にして節税するような事が出来ないので、毎月の手取り金額は少なくなります。
自分が成果を出して貢献したとしても、会社の事情によって、給与が減額になる事もあるなど、完全歩合給と比較すると収入面では不公平に感じる場面があるかもしれません。
ノルマがある
完全歩合給のIFAは、会社がそのIFAの手数料以上に支出する事がないため、手数料がゼロであっても関係ありませんし、何も会社に迷惑はかかりません。
しかし固定給を貰って雇用される以上、少なくとも給与と同額程度の利益を会社に貢献する必要があります。
会社からすれば、売って欲しい商品があれば、それを売ってくれないIFAは、リスクを取って雇用する意味がありません。
つまり、程度に差はあると思いますが、証券会社や保険会社などの金融機関の営業と同じように、売らないといけない商品や金額がノルマとして設定される可能性が高いです。
会社の指示に従う義務
ノルマが設定される事と同じように、雇用関係にある以上、理不尽だと感じても指示に従う義務が発生します。
例えば、出社時間や服装、転勤や配置転換などの会社からの命令については、基本的に拒否する権利がなく、指示に従うことになります。
本来の独立であるIFAは、この会社との主従関係がない事が大きな特徴であり、それによって中立なスタンスである事が強みなので、これは大き過ぎるデメリットかもしれません。
固定給+歩合給
SBIマネープラザでも募集しているのが、一部が歩合給になっている報酬体系です。
その他の仲介業者でも、完全歩合ほど多くありませんが、一部の業者ではこのような条件を提示しています。
個人事業主としての契約の場合
歩合給の比率を下げる代わりに、定額の固定給を支払うという契約です。
「歩合90:固定10」
固定給といっても、仲介業者はそもそも固定費(毎月業績関係なく出て行くお金)を増額することを極端に嫌うため、数万円程度〜多くても10万円までにしておきたいと考えています。
「ほとんどが歩合給ではあるものの、営業の経費を最初から負担するのは大変だと思うので、数万円だけは必ず支給します。」という考え方ですね。
そのため、固定給だけで生活が送れるレベルではなく、あくまで営業ができるレベルの固定給
また、仲介業者はあくまで個人事業主に対する外注費として支払うので、社会保険や厚生年金に加入できるわけではなく、福利厚生面では純粋な完全歩合給のIFAと同じ条件になります。
独立して1年程度経つと、収益的には安定してくるIFAが多いと思いますので、独立当初に一部固定給にするような条件であれば、IFAにとってはベストな条件と言えるでしょう。
正社員としての契約の場合
会社員として働きながら、成果に応じて歩合給をもらうという契約です。
SBIマネープラザがこの条件での正社員を募集しています。(詳細:SBIの社員IFAについて)
「歩合10:固定90」
仲介業者と雇用契約を結んだ上で、正社員として会社のために働きながら、会社に貢献した成果に応じて歩合給をもらう事ができます。
正社員としての雇用ですので、社会保険に加入できることや、福利厚生が充実しており、収入面で安定すると共に、成果に応じて歩合給を貰えるので、魅力的に思うIFAもいるでしょう。
しかし仲介業者のための仕事をする事になりますので、自分が売りたい商品を売りたい時に提案するIFAと違い、会社の方針に縛られる事になります。
歩合給についても、固定給が手厚い分、多額になるケースは稀です。
仮にものすごく仕事ができる人がいた場合、安定というメリットを考慮しても、完全歩合給のIFAになった方が収入面では圧倒的に良いのが実情です。
さいごに
冒頭にも書いたように、IFAとは独立したアドバイザーの事を意味しますので、顧客に対して中立なスタンスである事が求められます。
会社から雇用されてしまったり、一部固定給を受け取ってしまうと、IFAは会社に対して貢献しなければいけないという義務が発生します。
ノルマなどが設定される事によって、確実に中立でいることは出来なくなってしまいます。
一方で、独立当初については収入的に不安定な時期が続く事になりますので、最初の数ヶ月間については、一部を固定給にしてもらうなど交渉しても良いでしょう。
何れにしても、本来の意味での独立をしたいと考えているのであれば、最終的には完全歩合給のIFAとなる必要があります。